第3章 溶解と水溶液の性質
2 分離と精製
1 溶解と溶液お
【溶解】
物質が水などの液体に溶けることを〔 溶解 〕という。固体の物質が水に溶解した場合,物質をつくっている粒子の間に水分子が入りこむことによって,物質をつくっている粒子は,1つ1つばらばらの状態になる。ばらばらになった粒子は熱運動によって水の中を広がっていき(分散し),水分子とともに均一に混ざり合う。
塩化ナトリウムNaClのように原子が集まっている物質が溶解すると,Na原子とCl原子1つ1つばらばらになって分散している。
砂糖のように分子が集まってできている物質が溶解すると,砂糖分子1つ1つがばらばらになって分散している。
気体の物質が水に溶けた場合も同じ状態になる。例えば,アンモニアNH3は水に溶けやすく,水に溶けると1つ1つのNH3分子が水分子と混ざり均一になっている。
水分子や物質をつくっている原子や分子は目に見えないので,溶解すると〔 透明 〕になる。
【溶液】
アンモニア水は,水にアンモニアが溶解したものである。この場合の水のように物質を溶かしている液体を〔 溶媒 〕という。一方,アンモニアのように溶媒に溶けている物質を〔 溶質 〕とう。また,アンモニア水のように溶媒と溶質を合わせたものが 〔 溶液 〕で,とくに溶媒が水の場合を〔 水溶液 〕という。
溶液の性質
・溶液は透明である。(無色でも有色でもよい) 物質をつくっている粒子がばらばらになり,目に見えないから。
・質量は一定に保たれる。 溶質の質量+溶媒の質量=溶液の質量
・溶液は均一である。 どこをとっても同じ濃さになる。
【溶液の濃度】
水100gに食塩25gを溶かした食塩水Aと,水420gに食塩80gを溶かした食塩水Bとではどちらが濃いか。これは,溶液中にどれだけ食塩があるかで決まる。
A 食塩水100g+25g=125g中に食塩25g ⇒ 25/125=0.2
B 食塩水420g+80g=500g中に食塩80g ⇒ 80/500=0.16 Aの方が濃い
質量パーセント濃度
溶液の濃さ(濃度)は溶液(溶媒+溶質)中にどれだけ溶質があるかで示す。これはパーセント(百分率:100の中にどれだけあるか)で表すことができる。溶液の場合は質量でパーセントをとるので質量パーセント濃度という。
質量パーセント濃度〔%〕=溶質の質量/溶液の質量×100
例題 次の各問いに答えよ。答えは少数第一位まで求めよ。
(1) ある物質20gを水100gに溶解した。この溶液の質量パーセント濃度はいくらか。
(2) 水100gに食塩を溶かして,10%の食塩水を作りたい。食塩何gを水100gに溶かせばよいか。
@ 20/(20+100)×100=16.66≒16.7〔%〕
A 食塩をx gとすると,x/(x+100)×100=10, x=11.11≒11.1〔g〕
【飽和溶液】
水に食塩(塩化ナトリウムNaCl)をどんどん加えていくと,これ以上溶けなくなる状態になる。なぜこのような状態になるか考えてみよう。
水溶液中で食塩をつくっている粒子は,1つ1つばらばらになり熱運動で分散している。この水溶液にさらに食塩を加え溶かすと,分散する粒子が多くなる。分散する粒子が多くなると粒子どうしの距離が近くなり,粒子間に引力がはたらくようになるので,粒子どうしが集まり下にたまりはじめる。
このため,食塩などの物質はある一定量までしか溶解しない。これ以上溶けなくなった状態の溶液を〔 飽和溶液 〕という。
飽和溶液を加熱すると,溶質粒子の熱運動が大きくなるので,粒子間にはたらく引力を振り切りきって分散することができる。そのため,飽和状態になった溶液でも加熱をすれば,さらに物質を溶解することができる。ただし,例外的に加熱すると溶けにくくなる物質もある。
【溶解度】
一定の質量の溶媒に,どれだけの質量の溶質が溶けるかを示した数値を〔 溶解度 〕という。溶解度は次の例のように,溶質の種類によって異なる。 通常,溶解度は溶媒100gに溶ける溶質の最大量で示す。(左下図)
溶解度曲線
物質の溶媒に対する溶解度は,温度によって変わってくる。 一般的には高温ほど溶解度は 大きくなる。温度と溶解度の関係を示した曲線(グラフ)を〔 溶解度曲線 〕という。(右上図)
例題 上の溶解度曲線から数値を読みとって,次の各問いに答えよ。
(1) @ 60℃における硝酸カリウムの溶解度はいくらか。
A 20℃における硫酸銅の溶解度はいくらか。
(2) @ 40℃の水100gに硝酸カリウム50gを溶かした。この水溶液に硝酸カリウムはあと何g溶けるか。
A 60℃の水50gに硝酸カリウム20gを溶かした。この水溶液に硝酸カリウムはあと何g溶けるか。
(3) 40℃で,硝酸カリウムの飽和水溶液100g中に,硝酸カリウムは何g含まれているか。答えは整数で求めよ。
(4) 20℃で,硫酸銅の飽和水溶液をつくった。この溶液の質量パーセント濃度を求めよ。答えは整数で求めよ。
(1) @ 110 A 20
(2) @ 40℃の水100gに硝酸カリウムは65gまで溶ける。すでに50gを溶かしているので,あと65−50=15〔g〕まで溶ける。
A 硝酸カリウム … 60℃で水100gに110gまで溶ける ⇒ 水50gには,55gまで溶ける
すでに20g溶かしているので,あと55−20=35〔g〕まで溶ける。
(3) 40℃での硝酸カリウムと溶解度と飽和溶液100gに溶けている硝酸カリウムの量をx〔g〕とすると,次のようにまとめられる。
(4) 20℃での硫酸銅の溶解度は次のようにまとめられる。
水 + 硫酸銅 = 飽和溶液
100g 20g 120g
質量パーセント濃度=20/120×100=16.6≒17〔%〕
再結晶
溶液中の溶質が結晶として現れる(通常は,溶液の底に沈殿する)現象を〔 析出 〕という。溶液中の物質を析出させて取り出す操作を〔 再結晶 〕という。
例題 硝酸カリウムは水100gに対して,60℃で110g,80℃で170gまで溶解する。以下の各問いに答えよ。
(1) 80℃で水100gに硝酸カリウムを150g溶かして溶液をつくった。この溶液を60℃まで冷却すると,硝酸カリウムは何g析出するか。
(2) 80℃で硝酸カリウムの飽和溶液をつくった。この飽和溶液100gを60℃に冷却すると,何g硝酸カリウムが析出するか。答えは整数で求めよ。
(1) 40g